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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)4916号 決定 1954年7月05日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人天野敬一の上告趣意第一点第二点は、原審において主張されずその判断を経ていない事項であって、上告適法の理由とならないばかりでなく、所論は憲法違反及び判例違反をいうけれども、その実質は本件賄賂の収受された時期に関する審理不尽の違法あることを主張するものであって(そして記録を精査すると、本件収賄者の一人である大西俊治は当時公務員として在職しておった期間であること明らかである)単なる訴訟法違反を理由とする主張であるに過ぎない。同第三点も単なる法令違反の主張を出でないのであって(なお所論刑法一九七条の四の規定は没収又は追徴の対象範囲を定めた規定であって、何人について之を言渡すかの点についてまで規定したものではないと解するを相当とし、本件のように、収受された賄賂が贈賄者に返還せられ贈賄者においてこれを費消した場合に、右の規定によって贈賄者よりその額を追徴することを不当とすべき理由はない。(大審院大正一〇年(れ)第一六二四号同一一年四月二二日第一、第二、第三刑事聯合部判決、判例集一巻二九八頁参照。)刑訴四〇五条所定の上告理由に当らない。

また、記録を調べても本件に刑訴四一一条を適用すべき事由ありとは認められない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により、裁判官一致の意見によって、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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